プロローグ

皐月彩

皐月彩

2019.07.17

コップの中の水は、常温ではのど越しが悪い。

だから、冷たくしたいと思って氷を入れると、コップの容量によっては溢れてしまう。

のどが渇いているから量を今すぐ飲みたいのに、氷を入れてしまえば、すぐにコップ沢山の水を飲むことはできない。


何かを選ぶには、何かを一度諦める。それが、この世の中の理。


それでもみんな、何もかもを欲しがっては、そのコップを溢れさせてしまう。

水では味気ない、もっと量が欲しい、もっと質のいいものを。そうするうちに、時間は刻一刻と流れ、口の中はいつまでも渇いたままになる。


干川譲は、決断を迫られていた。


「あなたがたはどんな九六人を選びますか?」


テーブルの中心に置かれた水晶のようなボールの中では、時たま気泡が踊っていた。


干川譲は迷っていた。膠着した議論の中で、目の前に座る三人とホログラムの瞳が、干川譲を、じっと見つめていた。


コメントがありません。